イノベーションを生み出すためには?/映画『インターンシップ』に学ぶ

デジタル時代のビジネススキル

閉塞感が漂う現状を打開しようと「イノベーション」の必要性が叫ばれる昨今ですが、イノベーションという言葉を、「技術革新」のような文脈で理解している人が多いのではないでしょうか?

イノベーションは、オーストリアの経済学者シュンペーターの理論の中心的な概念です。シュンペーターは、著書『経済発展の理論』の中で、イノベーションの同義語として「新結合」という言葉を使っていますが、これこそイノベーションの本質です。

変革は何もないところから生み出されるのではなく、固定概念を捨てて、一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考こそが大切です。

イノベーションを大切にする企業といえばGoogle。そのGoogleでのインターンシップの様子を映画にした『インターンシップ』には、イノベーションを起こすためにGoogleが大切にしている価値観が描かれています。

映画『インターンシップ』のあらずじ

デジタル時代から取り残されて倒産したアナログ時計販売会社でセールスマンとして働いていたビリーとニックの2人は、なんと、デジタル時代をリードする巨大コングロマリットGoogleのインターンシップに応募します。

ネット選考によるインタビューでは、「5セント硬化のサイズに縮んだあなたは、ミキサーの中に落ちました。さて、どうしますか?」という奇抜な質問に対して、頓珍漢な答えを返しながらも、「ミキサーからどうやって出るかが大切なんではない。出た後にどうするかが大切なんだ。自分達は職を失いミキサーの中のどん底にいた。そこから出てGoogleの一員になろうとしている。そのことが大切なんだ。」というストレートな気持ちを伝えます。

選考者の多くが2人を不合格とする中で、たった1人が彼らにインターンシップ参加へのチャンスを与えることを主張します。

インターンシップには全米から優秀な学生が集まり、熱いひと夏を送ります。与えられた課題を勝ち抜いた1チームだけが正社員のオファーを受けることができるという95%が脱落する競争を繰り広げます。そこに求められるのは頭脳以上のもの。それはGoogliness(グーグリネス)と呼ばれるGoogleらしさ。

最初のチーム作りで、誰からも声をかけられずに躓いたビリーとニックは、同じように誰ともチームを組めなかった学生たちとの寄せ集めチームに入ることに。専門的な内容に全くついていけない場違いな2人は、最初の課題の「バグチャレンジ」で、チームのメンバーからも仲間外れに。

しかし、持前の社交性と、根っからの人好きで明るい性格の2人は、奇想天外の発想を出しながら、次第にメンバーをまとめ上げていきます。アプリを作る課題では、アプリの機能から発想して悩むメンバーを、「アプリを使うのは人間だ。使う人間の立場に立って考えよう。」と、夜の街に連れ出します。一晩の外出を大いに楽しみ、大いに笑い、大いに酔っ払い、大いに意気投合したメンバーが見つけ出したアプリとは、「酔った勢いで、後で恥ずかくなるようなメールを送るのを防止するアプリ」。そしてこのアプリがダウンロード1位になるのです。

バラバラだったメンバーには、お互いへの信頼といたわりの気持ちが芽生え、活き活きとしたチームへと変貌していきます。

次の課題の「カスタマーサポートセンター」の対応では、目を見張る成果を出すものの、ビリーの手痛いミスで失格になると、今度はメンバーがビリーを励まします。

最後の課題は、実践での「Google広告契約」の獲得。メンバーは親子が経営するピザ店を訪れます。ビリーは、こだわりのピザソースの隠し味をズバリと言い当て、店主の想いに寄り添います。それでも、地元に愛される店で十分だからGoogle広告は必要ないと頑なに首を縦に振らない店主に対して、Googleにアップされたこの店の口コミ情報を示してこう言います。「お客様があなたを探しています。お客様があなたを探す手伝いをさせてください。あなたの地元を拡げましょう」と。

そして、インターンシップを通過する1チームを発表する当日がきます。勝つためには手段を選ばない自信満々のエリートチームのリーダーは自分達の勝利を疑いません。しかし結果は、ビリーとニックが率いるチームの優勝!

猛然と抗議するエリートチームのリーダーに対して、グーグルの責任者が言います。「Googlinessが判らなあなたにはここに居場所はない。」

多様なメンバーの一人ひとりに寄り添って長所を引き出し、固定概念を排除して、どんな逆境からも這い上がるあきらめない気持ちをもったチームワーク。それこそGoogleが大切にするGooglinessであり、新結合を生み出す価値観なのです。

イノベーション(新結合)の事例

私たちの身の回りにもイノベーション(新結合)はたくさんあります。

例えば、握り寿司とベルトコンベヤーを結び付けた「回転寿司」も立派なイノベーションです。「寿司は、職人が注文を受けてから握るもの」で「ベルトコンベヤーは、工場などにおいて次工程まで物を運ぶための道具」という固定概念を打ち破れなかったら、回転寿司というイノベーションは生まれなかったでしょう。

もう一つ事例を紹介しましょう。それは「ラクダ冷蔵庫」です。

ラクダ冷蔵庫とは、アフリカの村から村へと伝染病を予防するためのワクチンを運んで接種するまでの完結したシステムで、ユニセフが開発したイノベーションです。

かつてはジープに冷蔵庫を積んでワクチンを運んでいましたが、ジープでの移動は、過酷なアフリカの自然の前では頻繁に故障も起こし、ガソリン代も高額になります。そこで、ユニセフは、ラクダにソーラーパネルを電源とする冷蔵庫を背負わせて、ラクダ引きに注射の打ち方だけを教えることで、医師がいない村でも伝染病の予防注射を完結することができる仕組みを考えたのです。「ラクダ」「冷蔵庫」「ソーラーパネル」「ラクダ引き」をむすびつけることで、今までにないイノベーション(新結合)が生まれたのです。

反対に、新たな社会的な価値を生まない組み合わせは、いくら技術的に高度なものであったとしてもイベーションではありません。イノベーションは研究所からは生まれません。イノベーションは現場から生まれるものです。イノベーションは技術者しか生めないものでもありません。

多様性を受け入れ、固定概念で評価しない自由闊達な風土とチームワークが、イノベーションを生み出す根源です。

<注>
「ラクダ冷蔵庫」については、明治大学の野田先生のコメントを参考にしています。

投稿者のこだわり

Takashi
Takashi
「おたがいさま」という日本語が好きです。お客様と共に育つ「おたがいさまビジネス」の起業をめざします。
「早く行きたければ1人で行け。遠くまで行きたければみんなで行け。」という諺も好きです。価値観を共有する人達と力を合わせて遠くへ飛ぶことをめざします。

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